読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

saii-lab

「知性のルーツを発見する」がテーマのブログ。人工知能(AI)、プログラミング教育などの幅広いトピックを扱います。

神経細胞同士の接合部(シナプス)と記憶、そして人工知能

人工知能 生物学

神経細胞と神経細胞の接合部であるシナプスは、記憶や学習において重要な役割を果たしていると考えられています。

人工知能の一種、ニューラルネットワークにおいても、このシナプスをモデルとした仕組みにより入力に対する判断が行われます。

今回は、このシナプスと人工知能の関連について概略を解説していきます。

シナプスには大まかに分けて化学シナプス電気シナプスに分かれます。化学シナプスは電気シナプスよりも広い範囲で見られるため、一般にシナプスというと化学シナプスのことを指すことが多いです。

化学シナプス

構造と機能

化学シナプスでは、細胞間に神経伝達物質が放出され、それが受容体に取り込まれることで情報の伝達が行われます。

f:id:azyukky:20170131213125p:plain

Utilisateur:Dake CC by-sa 3.0 シナプス - Wikipedia

神経細胞Aと神経細胞Bの間のシナプス

(1)ミトコンドリア、(2)神経伝達物質が詰まったシナプス小胞、(3)自己受容体、(4)シナプス間隙を拡散する神経伝達物質、(5)後シナプス細胞の受容体、(6)前シナプス細胞のカルシウムイオンチャネル、(7)シナプス小胞の開口放出、(8)神経伝達物質の能動的再吸収

出典: シナプス - Wikipedia

 上の図ではシナプスの間の間隙は広く見えるかもしれませんが、実際は20nm程度しかありません。これは分子サイズのオーダーですね。

化学シナプスでは、以下のような順番で情報の伝達が行われます。

  1. 神経細胞Aからの電気シグナルにより、シナプス間隙に神経伝達物質が放出される
  2. 神経細胞Bのシナプスの受容体が神経伝達物質をキャッチする
  3. 神経細胞Bの膜電位が変化する

化学シナプスは、興奮性シナプス抑制性シナプスに分けることができます。

神経細胞の内外の電位差を膜電位といいますが、興奮性シナプスは神経細胞Bの膜電位を上げ、抑制性シナプスは神経細胞Bの膜電位を下げます。

シナプスの可塑性

シナプスの伝達効率は、前後の神経細胞の活動状態などによって変化し、保持されます。

これをシナプスの可塑性といい、記憶や学習に重要な役割を果たしています。

シナプスの前後の神経細胞の活動状態により、神経伝達物質の放出量や受容体の数、受容体の状態、シナプス自体の数などが変化すると言われていますが、詳細なメカニズムに関してはまだ謎が多いようです。

このようなシナプスの可塑性が、記憶を形成すると言われています。

電気シナプス

f:id:azyukky:20170201144357p:plain

出典: シナプス - Wikipedia

電気シナプスでは細胞間が接着され、コネクソンというタンパク質を開閉可能な穴として神経細胞間にイオン電流が流れます。そのため、情報の伝達は化学シナプスよりも電気シナプスの方が高速です。

電気シナプスは無脊椎動物の神経系では一般的に見られます。脊椎動物では、網膜、心筋、海馬、大脳皮質などで部分的に用いられています。

無脊椎動物→脊椎動物の知性の進化の歴史に関しては、以下の記事で扱っています。

blog.saiilab.com

blog.saiilab.com

電気シナプスは速度面では大幅に優位なのですが、化学シナプスのように抑制により膜電位を下げることはできません。そのため、反射的な動作の制御には適していますが、複雑な情報処理には適していないものと著者は考えています。

シナプスと人工知能

シナプスの伝達効率は、コンピュータによる人工ニューラルネットワークではニューロン間の重みとして扱われています。

個々のニューロン間の重みはスカラー値で、負の値をとることもできます。従って、興奮性シナプスも抑制性シナプスも表現できることになります。

ニューロンの重みを変更するためには、一般的にバックプロパゲーションという逆方向に情報を伝達し重みを修正していく手法が用いられています。しかしながら、実際の生物のシナプスにおいて情報は一方通行であり、バックプロパゲーションを想定するのは難しいです。実際の神経細胞、そしてシナプスではより複雑な記憶のメカニズムが存在するようです。

また、記憶のメカニズムは神経細胞のみが担っているわけではないのかもしれません。近年の研究では、脳を満たす神経細胞以外の細胞、グリア細胞が注目されています。特に、グリア細胞の一種アストロサイトは、シナプス前後の神経細胞とともに3つの細胞でシナプスを形成しているという説もあるぐらいです。

従来、グリア細胞は神経細胞の構造を支えたり栄養を補給したりして、直接情報処理とは関係ないと考えられてきましたが、実際は無視できない役割を果たしているのかもしれません。

基本的に人工ニューラルネットワークは天然の神経細胞のネットワークを模したものですが、上記の例のようにその情報処理のモデルを完全に模倣できているわけではありません。そういう意味で、人工ニューラルネットワークのモデルは多くの改良の余地を秘めているかと思います。

なお、こちらの私のオンライン講座では、実際に人工ニューラルネットワークのコーディングを行います。

www.udemy.com

有料で申し訳有りませんが、興味のある方は是非トライしてみてくださいね。 

参考:

シナプス - Wikipedia

抑制性シナプス - 脳科学辞典

http://www.cbii.kutc.kansai-u.ac.jp/kaisetsu/5.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/29/4/29_243/_pdf

特集:シナプス伝達を超える脳の謎 - 理研BSIニュース No. 40(2008年7月号)- 独立行政法人 理化学研究所 脳科学総合研究センター(理研BSI)

グリア細胞