SAI-Lab Blog

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知性の進化の歴史 -前半-

最近、スマートフォンアプリへのAIの導入方法を検討しています。

限定されたリソースで、いかにして汎用性の高い知性を実現するか、それは動物の神経細胞ネットワークの進化の歴史に学ぶことが多いように思えました。

そういった意味で、今回は神経細胞ネットワークの進化の歴史を考察していきたいと思います。

全ての生物、全ての動物は共通の祖先を持ちますが、ヒトにつながる進化の系統で、早い段階で枝分かれした順に並べると以下のようになります。

  1. 原生動物(アメーバ、ゾウリムシなど)
  2. 海綿動物(カイメンなど)
  3. 刺胞動物(クラゲ、サンゴ、など)
  4. 棘皮動物(ウニ、ヒトデなど)
  5. 原索動物(ホヤ、ナメクジウオなど)
  6. 脊椎動物(魚、鳥、哺乳類、ヒトなど)

本記事では、この順番に知性の進化の歴史を追っていきます。

これ以外にも軟体動物や節足動物などの系統があります。それらの系統の神経ネットワークに関しては、以下の記事で少々触れています。

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 1. 原生動物(アメーバ、ゾウリムシなど)

-20億-12億年前?(遺伝子を収める核を持った真核生物の登場)-

原生動物は、一つの細胞しか持たない単細胞生物です。一つの細胞しか持っていないので、当然神経細胞もありません。

しかしながら、例えばゾウリムシの場合は物体に衝突して泳ぐ方向を変更したり、捕食者に襲われた際に泳ぐ速度を上げて逃避したりします。

これは細胞内の生体電位によるものです。障害物にぶつかると細胞内の電位がプラスに変動し、電位が一定値を超えるとゾウリムシは逆に泳ぎだします。

すなわち、ゾウリムシの細胞は一個の神経細胞の働きを兼ねているようにも見えます。

神経細胞に相当するものが一つしかないので、この段階では知性というよりもセンサーと表現したほうが適切かもしれません。

参考:

神経系の起源と進化 - JSCPB wiki

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「神経が無い動物」の行動って? - 生物史から、自然の摂理を読み解く

2. 海綿動物(カイメンなど)

-10億年前?(多細胞生物の登場)-

海底に固着するカイメンなどの海綿動物は多細胞生物ですが、情報処理に特化した神経細胞はまだありません。また、個体の明確な区別もできません。

しかしながら、認識能力は持っています。各細胞は同種の細胞を識別し結合することができます。そのため、二つの異なる種のカイメンの細胞をバラバラにしても混ぜても、同じ種の細胞同士が集まって再び個体を形成します。ただし、種の区別はできても個体の区別はできないようです。

また、感覚細胞と運動細胞が電位差を用いて連動しています。これにより多数の細胞が協調し水温やイオン濃度に応じて吸水口を開閉したりできるようです。

この段階でも、知性というよりもまだセンサーですね。ただ、細胞の機能の特化や多数の細胞の協調、電位差やイオン濃度の活用が行われており、後の神経細胞につながる原型が確認できるかと思います。

参考:

脳のない海綿動物も“くしゃみ”をする | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

カイメンの認識機能 - 生物史から、自然の摂理を読み解く

3. 刺胞動物(クラゲ、サンゴなど)

-6.4-5.42億年前?(エディアカラ紀)-

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刺胞動物になって、ようやく神経細胞が登場します。ただ、まだこの段階では後の脳につながる神経細胞が密集した中枢は持っていません。

神経細胞のネットワークは網の目のように身体中に広がっており、特定の箇所に集中していません。このような神経の形状は散在神経系と呼ばれています。

そのため、一つの神経細胞が命令を下すと、他の神経細胞に興奮が伝わり統合された運動を行うことができます。

ただ、中枢がないためまだ複雑な判断や運動を行うことはできません。この段階では、知性の存在はまだ疑わしいかと思います。

しかしながら、例えばクラゲの場合、神経細胞がループになった神経環というものがあります。これは、目に相当する光受容組織に含まれる小さな神経節同士をつなぎ、情報の統合を行なっているようです。中枢神経系の萌芽は、この段階でもすでに存在しています。

参考:

Receptor

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/33/3/33_116/_pdf

徒然なるままに|生命の誕生と40億年の進化

 

長くなりますので、続きは別の記事に書きます。

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