SAI-Lab Blog

「ヒトとAIの共生」がミッションの企業、SAI-Lab株式会社のブログです。

書評: iOSアプリ開発 UI実装であると嬉しいレシピブック

昔、iOSの講師をしていた時の受講生だった酒井さん(@fumiyasac)からの、著書のレビュー依頼がありました。

タイトルは「iOSアプリ開発 UI実装であると嬉しいレシピブック」で、本日2/22発売です。

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技術書展への出展が執筆のきっかけになったそうです。酒井さんは元々デザイナーで、エンジニアとしての技術力もあり大変活動的な方ですが、日々のご活動がこのような形で実を結ぶことになりとても素晴らしいです。

酒井さんはアプリのUIに大変造詣が深く、「UI番長」とも呼ばれてたりするのですが、この本はこれまでサンプル開発や実務の中で培ったノウハウ等から、UI構築をする上で重要な実装ポイントやアイデアを紹介しています。

実例として掲載されているのは、

「サイドナビゲーション型のUI」

「写真を拡大する画面遷移UI」

などの具体的かつ実践的なサンプルです。

これらにより、UI構築をする上で重要な実装ポイントがこの本を通して身につくかと思います。

読了後は、様々なUIのアイディアが自然と頭に思い浮かぶようになっているのではないでしょうか。


対象となる読者はこれからiOS アプリを実戦レベルで開発していこうと考えている方かと思いますが、特にUI実装や表現に関する部分にさらなる磨きをかけていきたい方に向いているかと思います。基本的なSwiftの文法は解説していませんので、その点は注意が必要です。

簡単なようで意外と難しく奥が深いUIの世界、この本はその深淵を覗かせてくれるかと思います。

 

SAI-Lab株式会社、設立から1年が過ぎました

2019年2/5で、SAI-Lab株式会社を設立してから1年になります。
なんとか、最初の1年を乗り切ることができました。

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この一年、書籍の執筆やUdemyコースのリリース、企業研修やE検定の講師、大学での公演、技術イベントでの登壇など様々な活動を行ってきましたが、反省点も多くあります。
今後もミッションである「ヒトとAIの共生」を見据えて、AIに関する研究と教育を行ってきますので、皆様今後ともよろしくお願いいたします。

今年度の課題は、教育のみではなく研究の方でも実績を残すことです。

読書録: 脳はいいかげんにできている


神経学者デイヴィッド・J. リンデンの著書、「脳はいいかげんにできている」を久々に読みました。

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この本によれば、脳には以下の進化上の制約があるとのことです。

  • 脳をゼロから設計し直すことはできない。必ず既存のものに新たな部分を付け加える、という方法を採らなくてはならない。
  • 脳に一旦持たせてしまった機能を「オフ」にするのは非常に難しい。たとえ、その機能が負の効果をもたらすような状況でも、ななかな「オフ」にはできない。
  • 脳の基本をなすプロセッサであるニューロンは処理速度が遅く、信頼性も低く、信号の周波数帯域も低い。

すなわち、脳は増築を繰り返した建造物のようなものであり、最適化されたものであるとはとても言えません。

例えば産業用のロボットであれば、目的に沿ってプログラムは最適化されますが、脳はそのような進化を遂げてはいないようです。

信頼性が低く、処理速度も遅いニューロンの、膨大な集合体であり、進化の過程でパフェのように次々と外側に層が足されていった構造をしています。

これを短い言葉で表すと、「冗長」「つぎはぎ」などがしっかりとくるのではないでしょうか。

現在、人工知能のメインストリームは目的に沿った最適化ですが、あえて冗長にすることでより脳に近いものができるかもしれません。

「意識はいつ生まれるのか」で扱っていた「意識」は、この冗長性が重要に思えます。

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読書録:「意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論」

統合情報理論の提唱者による本。

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

 

 ネットワークが分断され過ぎでもなく、密すぎでもいないときネットワークには複雑な因果関係が生まれ、それが「意識」の源泉になっていることを理論、実験ともに示しています。
磁場により脳に直接与えた刺激は、「意識がある」状態では脳内で複雑な因果関係を伴うパターンのトリガーとなり、「意識がない」状態では単純なパターンしか起こしません。
それのみが意識の原因とは限らないようにも思えますが、巨大なネットワークにおける複雑な因果関係が意識の源泉であるならば、コンピュータ上にこれを再現することは困難で無いようにも思えます。「人工知能」から「人工意識」へ、考えをよりコアな方向へ向ける必要性を感じました。

読書録: 「科学的思考」のレッスン

そもそも、「科学」って何でしょうか?
改めて考えてみて訳が分からなくなったので、考えを整理するために「科学的思考」のレッスンという本を読みました。

「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス (NHK出版新書)

「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス (NHK出版新書)

 

 この本によれば、科学におけるより良い理論や仮説の基準は以下の3つとのことです。


①より多くの新規な予言を出してそれを当てることができる
②アドホック(その場しのぎ)の仮定や正体不明・原因不明の要素をなるべく含まない
③すでに分かっている多くのことがらを、できるだけたくさん、できるだけ同じ仕方で説明してくれる。

以下は僕自身の考えですが、結局、科学とは世界を一貫して繋いでくれる、常に疑われ続け継続的に更新される物語のようなものかと思います。

常に疑われ続ける、故にロバストな体系なのでしょうね。
物語である以上文学やアートの要素も必要であり、美的感覚が大事なのではないでしょうか。真理へは絶対に届かないのですが、人類はより真理に近いストーリーを求めようとします。
科学は「技術」と相性がいいため、よく「科学技術」と一緒にして扱われます。科学にとって技術は検証であり、技術にとって科学は根拠となります。