SAI-Lab Blog

「ヒトとAIの共生」がミッションの企業、SAI-Lab株式会社のブログです。

読書録: 脳はいいかげんにできている


神経学者デイヴィッド・J. リンデンの著書、「脳はいいかげんにできている」を久々に読みました。

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この本によれば、脳には以下の進化上の制約があるとのことです。

  • 脳をゼロから設計し直すことはできない。必ず既存のものに新たな部分を付け加える、という方法を採らなくてはならない。
  • 脳に一旦持たせてしまった機能を「オフ」にするのは非常に難しい。たとえ、その機能が負の効果をもたらすような状況でも、ななかな「オフ」にはできない。
  • 脳の基本をなすプロセッサであるニューロンは処理速度が遅く、信頼性も低く、信号の周波数帯域も低い。

すなわち、脳は増築を繰り返した建造物のようなものであり、最適化されたものであるとはとても言えません。

例えば産業用のロボットであれば、目的に沿ってプログラムは最適化されますが、脳はそのような進化を遂げてはいないようです。

信頼性が低く、処理速度も遅いニューロンの、膨大な集合体であり、進化の過程でパフェのように次々と外側に層が足されていった構造をしています。

これを短い言葉で表すと、「冗長」「つぎはぎ」などがしっかりとくるのではないでしょうか。

現在、人工知能のメインストリームは目的に沿った最適化ですが、あえて冗長にすることでより脳に近いものができるかもしれません。

「意識はいつ生まれるのか」で扱っていた「意識」は、この冗長性が重要に思えます。

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読書録:「意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論」

統合情報理論の提唱者による本。

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

 

 ネットワークが分断され過ぎでもなく、密すぎでもいないときネットワークには複雑な因果関係が生まれ、それが「意識」の源泉になっていることを理論、実験ともに示しています。
磁場により脳に直接与えた刺激は、「意識がある」状態では脳内で複雑な因果関係を伴うパターンのトリガーとなり、「意識がない」状態では単純なパターンしか起こしません。
それのみが意識の原因とは限らないようにも思えますが、巨大なネットワークにおける複雑な因果関係が意識の源泉であるならば、コンピュータ上にこれを再現することは困難で無いようにも思えます。「人工知能」から「人工意識」へ、考えをよりコアな方向へ向ける必要性を感じました。

読書録: 「科学的思考」のレッスン

そもそも、「科学」って何でしょうか?
改めて考えてみて訳が分からなくなったので、考えを整理するために「科学的思考」のレッスンという本を読みました。

「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス (NHK出版新書)

「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス (NHK出版新書)

 

 この本によれば、科学におけるより良い理論や仮説の基準は以下の3つとのことです。


①より多くの新規な予言を出してそれを当てることができる
②アドホック(その場しのぎ)の仮定や正体不明・原因不明の要素をなるべく含まない
③すでに分かっている多くのことがらを、できるだけたくさん、できるだけ同じ仕方で説明してくれる。

以下は僕自身の考えですが、結局、科学とは世界を一貫して繋いでくれる、常に疑われ続け継続的に更新される物語のようなものかと思います。

常に疑われ続ける、故にロバストな体系なのでしょうね。
物語である以上文学やアートの要素も必要であり、美的感覚が大事なのではないでしょうか。真理へは絶対に届かないのですが、人類はより真理に近いストーリーを求めようとします。
科学は「技術」と相性がいいため、よく「科学技術」と一緒にして扱われます。科学にとって技術は検証であり、技術にとって科学は根拠となります。

東北大で講演しました

2018年、12月28日、東北大学金属材料研究所で講演をしました。

タイトルは、「ヒトとAIの共生、そしてシンギュラリティ」です。

 

 

 

講演の最後に、参加者の皆さんに挙手をお願いしました。

これから30年後におけるAIの立ち位置ですが、以下の3つから選択していただきました。

  1. AIは単なるツール
  2. AIは新たな「生物種」
  3. ヒトとAIは、融合する

結果は、1.が9人、2.が6人、3.が6人でした。

個人的には2.の立場なのですが、皆さんそれぞれAIに対する見方が異なるのが興味深かったです。

 

 

発表のスライドはこちらです。

speakerdeck.com

発表内で使用した動画はこちらです。


群知能と創発(1)


群知能と創発(2)


群知能と創発(3)


単細胞生物のシミュレーション

来年は論文を執筆する予定もあるので、アカデミックな方面で活動も強化していきたいと思います。

12/28、東北大学で講演します

今年最後、12/28に東北大学で講演することが決まりました。

講演のタイトルは「ヒトとAIの共生、そしてシンギュラリティ」です。

無料で、東北大の関係者でなくても参加可能です。

 

日時: 2018年12月28日(金) 15:00-

会場: 仙台市青葉区片平2丁目1−1東北大学金属材料研究所2号館1階 ラウンジ(地図

主催: 東北大学金属材料研究所 宇田研究室

 

多くの方のご参加をお待ちしております。

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東北大学での講演